「自然を味方にして描くんですよ」
そういってOHGUSHIは無邪気に笑った。和紙や墨を使い、大胆なタッチで女性像を描くことを得意とするイラストレーター、OHGUSHIのスタイルは、おおらかでいて繊細。和紙にあらかじめ水で下書きをし、幅25cmの平筆に6段階のグラデーションをもたせ一気に描いていく。付け足すことも、減らすこともしない。全てのプロセスが一発勝負。私が初めて彼の絵に触れたのは04年秋、「EROTIC LIPS」SPUMAで行われた個展の際だ。B1サイズからポストカードサイズの唇のみが、数十点飾ってあった。女性の唇をこんなにも官能的に描いた作品があったとは・・・。
白い空間で絵の具の分子が水に溶け、押し出されるようにして広がっていく。唇が命をもって呼吸しているようなイメージで、パネルと筆と絵の具の粒子と水が一体化していく。自然の力を味方につけ、女性の魅力を極めて純度高く表現するOHGUSHIを突き動かすエネルギーは何なのか、迫ってみた。
1
OHGUSHI/LIPS
CIBONE:生活空間を編集する“ライフエディトリアルショップ”を テーマに、大人のライフスタイルを提案するセレクトショップ。現在、OHGUSHIデザインの9種ギフトカードが全国のCIBONEショップにて発売中。※下記一部紹介
OHGUSHI/LIPS ・・・・和紙、墨といった日本古来の素材を用いて、官能的な唇をスタイリッシュに表現する一連の活動。余計な手を一切加えず、水・絵の具の分子が和紙の凹凸に染み込んでいくプロセスを楽しみながら描かれる唇は、生々しく色鮮やか。
中村:来月(5月)に控えているCIBONEでの個展の話や、CIBONEとのコラボレーションの話を聞かせてください。
OHGUSHI:CIBONEとはですね、オリジナルパブリックをいろいろ作る予定だったんですけれど、自分が作品に専念したかったのでちょっとそれはやめたんです。それでギフトカードを9種類2000枚刷ってもらってそれをまず第一弾として発売して、第二弾をまた5種類発売する予定ですね。で、あとはCIBONEのギャラリーでB1サイズの唇の絵を5、6枚と、B20B3サイズくらいの作品を数点展示する予定(5月2日031日)です。
中村:イメージとしては、前回の渋谷SPUMA「EROTIC LIPS」展(2004年11月)のような感じですか?
OHGUSHI:そうですね・・・でもあのときの唇のレベルからしたら全然違いますね。
中村:だいぶ描きこんでいる感じですか?
OHGUSHI:描き方が変わったんです。こういった平筆で書いているんですけれど(ここで幅25cmくらいの平筆を見せてもらう)、この平筆に片側から6段階のグラデーションをつけて色をしみ込ませます。
中村:絵の具は今もアクリルですか?
OHGUSHI:そうですね、アクリルガッシュですね。B1サイズ(1030mm×728mm)パネルに描いていきます。和紙を貼ったパネルに唇の形に水を塗って、そこに25cmの平筆をいれる。その瞬間、白い空間に絵の具の分子が水に溶け押し出されるように広がって行きます。この瞬間の緊張感がたまりません。
中村:唇の皺は、具体的にどのように作られていくんですか?
OHGUSHI:進める途中で筆の動きを止めると、絵の具がその時間分和紙にしみ込むので唇の縦皺が表現出来るんです。筆をパネルから離さず止めては進ませ、筆の角度を唇の中央を中心軸として、一筆で描きあげます。
中村:CIBONEとのコラボレーションの話はどのように発生したのですか?
OHGUSHI:CIBONEのトップページにQUADRAギャラリーというのがあって、そこは2ヶ月に一度アーティストが変わるんですけれど、そこで僕の唇の絵がフラッシュで展開されていたんです。そこからだんだん話が広がって。今はCIBONE全店で原画を展示販売しています。これは4月1日発売号のブルータスなんですけど、こんな感じで露出もしてます。
中村:SPUMAでの個展のものより色が深くなっていませんか?以前の作品はもっと淡くふんわりしていて、唇の柔らかさのような部分を強調して表現されてるような印象を受けました。でも、この写真をみるかぎりだと、力強さのようなものがプラスされていますね。
OHGUSHI:そうですね。以前はとにかくポップにしたかったんです。だからあえて深さを強調しなかった。唇の皺の部分を見てもらえるとよくわかると思います。
中村:ほんと、皺の入り具合がまったく違いますね。
OHGUSHI:なんかこう、吸い込まれる感じがするでしょ。昔はもっとにじみに頼っている部分があって、まぁそれはそれですっきりしていて楽しい部分もあるんですけど。皺を意識してじっくり描いている今のスタイルが好きですね。
2
表現するための素材、エロティック
中村:一連のLIPSの活動が始まってから、個人的に感じる部分があって。OHGUSHIさんの作品の方向性がだいぶ変わった気がしています。以前の作品は、ひたすらきれいでポップな印象があったのですが、今はそこに泥臭さみたいなものも含まれてきているような。きっかけって何かあったんですか?
OHGUSHI:きっかけは、お店(バー)に大きくて印象に残る絵を飾りたいってオーダーがあったからです。暗くてあまり見えない中でも、とにかくインパクトのあるものを描こうって思ったらエロティックなものがいいなという気がして。それをつきつめていったら唇だったという感じです。エロティックな要素が含まれるようになったから、泥臭く感じられるのかもしれないですね。
中村:OHGUSHIさんにとって、エロティックとは何ですか?
OHGUSHI:きれいなものを見たときに胸が切なくなる感じに似たものですね。それを見ると自分の中に取り入れたくなるような感覚。僕の中にも女性的なものがあって。女の子同士で自分よりきれいな子とか見るとムカツクじゃないですか(笑)。その子のきれいを取り入れたくなる。そういった感覚にも似てますね。自分の中にある”美”よりもキレイな女性がいると、作品で勝ってやろうと思いますね。良い刺激になります。
中村:その美を追い求める過程のなかで、当たってくる壁のようなものってありますか?
OHGUSHI:あまりそれは議論に値しなくて。というのも、美を求めるために描いてるわけではないんです。話がさかのぼるんだけど、僕、高校生のときからデザイン学校に通ってたんですよ。佐賀県の有田町っていう片田舎の学校で絵描いてて、そのころ授賞式なんかで東京にもちょくちょく出てきてはいたんですけど、その頃から絵で世間の注目を浴びる人間になりたいって思ってました。絵を描く原動力みたいなものはそこから始まってますね。欲望を満たすための過程で、エロティックなものをもつ女性を描くことがたまたま適していたんです。
中村:それに気づいたのはいつ頃なんですか?
OHGUSHI:高校生のときですね。
中村:ひたすら女の子をモデルに描いていたんですか?そのモデルは自身の好きな女の子だったりとか?
OHGUSHI:この人を描きたいっていう執着はないですね。
中村:女性のモチーフに注目をしているんですね。
OHGUSHI:そうですね。女性を描きたいのではなく、女性を描くことが自分を一番表現しやすいだけなんです。
3
イラストレーター森本美由紀さんとの出会い
中村:そんな高校時代を経て、21歳の時にデパートの巨大広告を見てよりイラストレーターへの夢を色濃くしたんですね。
OHGUSHI:あの時はほんとひどかったですね。一番ダメな時代だった(苦笑)。
中村:感銘を受けた広告ってどういったものだったんですか?
OHGUSHI:具体的には覚えていないんです。ファッションとも関係ないし自分の絵のスタイルともまったく関係かったと思うんだけど、とにかく大きな広告でしたね。イラストレーションって雑誌があるじゃないですか。あれで賞をとった若手アーティストの作品が広告に使われてたんです。それを見て、あれくらいには自分もいきたいと思ってました。とにかく熱くなりたかったんですよね。このまま人生終わってしまいそうな気すらしてたので。
中村:じゃあ、その広告を見てさらに火がついたと。
OHGUSHI:そうですね。
中村:当時の話を詳しく聞かせていただけますか?
OHGUSHI:いや0ひどかったですよ(笑)。福岡に21歳の頃から22歳までの1年間住んでいたんですけど、絵を描きながら夜の中州でカードディーラーやってました。バイトはけっこうつらかったですね。現実はやっぱり厳しくて。これじゃやっていけないなって思って一度田舎に帰ったんです。
中村:再度、上京することになったきっかけって何かあるんですか?
OHGUSHI:田舎に戻ったとき、押入れから小学生の時に使っていた墨道具が見つかったんです。それを使って描いてみたら面白くって、「ひょっとして僕にもまだ人生やれる事があるんじゃないか」と思い、再度福岡に道具セットをもって戻りました。
中村:福岡では何をされていたんですか?
OHGUSHI:福岡の時は似顔絵をやってたんです。1枚500円で3分で描いていたんで回転率が良くって。行列ができるくらい大盛況でした。当時貯金なんて2、3万しかなかったんですけど、似顔絵描いてたら2ヶ月くらいで東京に上京する金と学校に通う金くらいは稼げてました。
中村:当時好きだった、もしくは影響を受けたアーティストはいますか?
OHGUSHI:その頃は、森本美由紀さんが好きでしたね。彼女の描く女性像を見て、自分も女性の絵をもっと上手く描きたいと思うようになりました。それに、ファッションって自分の欲望を平等に表現できる媒体でもあるので、そこで自分が輝きを放てれば、そんな気持ちのいいことってないな、とも思っていました。
中村:自分の方向性を具体的にしていくのに、森本さんの存在が大きく影響していると。
OHGUSHI:そうですね。ほんと彼女のファンだったので。福岡時代、森本さんに自身の作品をプリントアウトしたものを送ったんです。そしたら手紙をもらって。「あなた若いのに、上手いわね」と書いてありました。「個展を東京でやるから、もし来る機会があったら観に来てください」ってお誘いをもらったので、さっそく会いに行きました。
中村:すごい行動力ですね。そこでは、どのような会話を交わされたんですか?
OHGUSHI:そのときは立ち話で終わったんですけれど、セツ・モードセミナーという専門学校があるから行ってみたらと教えてもらったのをきっかけに上京を決意しました。当時はほんと、森本さんを真似て絵を描いていました。今は全く別の作風ですが、今も見る度に胸がときめきます。上京してアトリエに遊びに行ったり呑みに行ったりして、イラストレーターとはどういうものか、何を勉強するべきか、丁寧に教えて下さいました。人間的にも素晴らしい方です。
4
twillとの出会い
中村:上京後、パリにも行かれているんですね。
OHGUSHI:フランス語の堪能な友達がいて、僕がフランス好きなんだって話をしたら、じゃあ行こうかみたいな話になって行っただけなんです。
中村:カジュアルな感じで始まった、長期滞在だったんですね(笑)。
OHGUSHI:そうですね(笑)、もともと仕事をもらうために行ったパリじゃなかったので。ただ行ったら行ったで暇じゃないですか。作品集を何かの時のためにと持参していたので、いたるところに出向いて行って、作品を見せてまわりました。電話もするんですけど、ほとんど相手にされませんでしたね。
中村:その中で出会った出版社がtwillだったと。具体的にどのようなお仕事だったんですか?
OHGUSHI:厳密に言うと、仕事というより僕の特集という形でtwillの雑誌に出してもらったんです。世界主要都市にて発売されていて、だいぶお金をかけてる雑誌でしたね。
中村:その時の縁もあって、最近も特集を組んでいらっしゃるそうで。
OHGUSHI:そうなんですよ。+81って雑誌があるんですけど、そちらでも5月にでる回の特集が34人の若手クリエイターの紹介なので、出させてもらうことになっています。表紙も描くことになってます。
中村:コンセプトはある程度かたまってきているんですか?
OHGUSHI:そうですね、おおかた決まってきています。
中村:少しだけ、教えてもらうことって可能ですか?
OHGUSHI:“日本”ですね。墨とか使って描いてるし。だけどその中で西洋っぽい部分もだしていこうかなと。
中村:OHGUSHIさんの作品は日本の素材を用いて描かれているのに、作風はすごく西洋風なんですよね。大胆なタッチがそのように見せているように思います。日本っぽい、萎縮した感じがないですね。
OHGUSHI:墨がたまたま表現しやすい素材だってだけかもしれない。最初、筆っぽさを筆で描いてたんですけど、それにだんだん腹がたってきて(笑)。なんだかとてもカッコ悪いことのように思えてきて、墨と日本の筆を使うことでそういった嘘っぽさを解消していったんです。
中村:(OHGUSHIの道具セットを見て)筆やパレットなんかも、とても丁寧に使われてますよね。一つ一つの道具に手入れが行き届いている。
OHGUSHI:そうですね。丁寧に扱いすぎて一度トリートメントかけたことすらあります。そしたらその筆ぜんぶダメになっちゃった(笑)。コシがまったくなくなっちゃって使い物にならなかったですね。
5
自然を味方にして描くということ
中村:コラムで発見した言葉なのですが、今日のインタビューで一番聞きたかったことに入らせてもらってもいいですか?
OHGUSHI:どうぞ。
中村:OHGUSHIさんの作品を初めて見たとき、何を使って、何を想って描いているのか気になりました。HPに「自然を味方にして描く」と書かれてますが、自然はOHGUSHIさんにとってどういった存在なんでしょうか?また、自然からどのようなエネルギーを得て描いているんでしょうか?
OHGUSHI:ここで言う自然っていうのは、あくまで絵を描く中での自然なんです。アトリエの中での自然ですね。まず、このアトリエの中に存在する時間。そして絵を描くときの水。頭にあるイメージを表現するための絵の具の分子。ベタ塗りには興味がないんですよ。水を張った和紙の上に、水や絵の具の分子が勝手に走りだす感じが好きなんです。白い和紙の空間に色彩がぶわ0って走り出す感覚。
中村:独特の線だと思うのですが、頭では何かイメージされているんですか?
OHGUSHI:意識したり、自分の力で描くんじゃなくて、水の力とか、ひろがっていく時間とかを味方にして描くんです。描き上げると、あとは水や重力といった自然の力が、人間の力では表現する事が出来ない美しいにじみ、色の深みを描いて行きます。その様子を我慢して手を付けないで見届ける事も僕の中では描く事の一部です。にじみが想定より広がったりするハプニングもありますが、それもまたいい。コンピューターや人間が細かく描き上げるものでは表現出来ないそのハプニングにこそ、作品の味を引き立ててくれるような要素が詰まっているんです。
中村:そうやって、自然と協働することで得られる価値ってありますか?
OHGUSHI:作品の仕上がり、すべてです。
中村:作風が変わってきたことにも影響しているのでしょうか。作風が変わったことの原因のひとつとして、自然を味方にして描くことがより色濃くなったというか。
OHGUSHI:たしかに前から意識はしていたことなんですけど、より上手く使えるようになった感じはしますね。
中村:自然との共存によって、OHGUSHIさんの作品はどんどんシンプルになっている気がします。余計なものを削ぎとって削ぎとって、最終的にでてきたシンプルなものをコアに見せているような。
OHGUSHI:それもそうなんですけれど、あとは光を意識して描くからでしょうか。作品は白バックっていうのが僕の中での決まりごとになってて、あと、光が反射している部分は線を描かないこともルールにしてます。だから作品のなかに線が少なくてシンプルにも立体的にも見えるんじゃないかな。
中村:束縛みたいなものがいっさいないですよね。下書きはしているんですか?作品自体には見えてこないですね。
OHGUSHI:下書きはします。トレースしたり、和紙だったら写し描きも簡単だし。あくまでゆるく、薄く下書きします。これは水彩紙で描いたんですけど(制作途中の絵を見せてもらう)。よりリアルに表現したいので線を丁寧にトレースして、体を墨で描いたものと画面上で合わせるんです。
中村:画面上で、色なども調整したりすることはあるんですか?
OHGUSHI:画面上で何か描くってことはしないんですけど、線の色をより濃くしたり薄くしたり、そういう調整はしますね。
中村:基本は手書きなんですね。
OHGUSHI:もちろんそうです。
中村:あと、HPでもう一つ気になった言葉が。「作品とプライベートの距離について考えた」との表現があったんですけれど、これは何を意味しているのでしょう?作品の中にどれだけ私的なものを盛り込むかということなのでしょうか、それとも作品はあくまで私的なものだけれど、それを一度客観視してみて引き離した後、再構築することなのでしょうか。
OHGUSHI:それってあるアーティストのライブを見たあと思った感想なんですよね。そのかたってギター一本でやってる方だったんですけれど、舞台を見ているようだったんですよ。すごくかっこよくて。(ここでしばしの沈黙)・・・とはいいつつ、本当はアーティストって言葉をかたる必要なんてないって思っているんです。(HPの)ダイアリーは、読んでくれる人が私も筆を握りたいとか、夢をもう一度追いかけようとか思ってくれたら嬉しいなという目的で書いているだけなので。自分も悶々としていた時代に言葉で救われた事が多かったから。それ以外の目的で、自分がどう思って何を考えて描いているかなんて基本的には表にだす必要はないと思っています。
中村:思っていることを言葉にした瞬間に安っぽく思えてしまうとかそういうことなんでしょうか。内容と表現に違いが生じてしまうというか。
OHGUSHI:いや、そんなことではないですね。それ以前の問題です。サービス精神があればできるんでしょうけどね。
中村:そういえば、今は周囲のことよりもご自身の動向にもっとも興味があるっておっしゃってますね。あえて、自室から出ないで自分と向き合う時間を増やされているとも聞きました。言葉に頼ることなく、作品とのみ真摯に向きあう。けっこうなエネルギーが必要だと思います。
OHGUSHI:そうですね、でも慣れました。昔は人と人とのつながりってやっぱり大事だね、なんて言いながら友達との時間に身をゆだねる部分もあったんですけれど、途中から、中身があってこその人間関係だと思うようになって。それを始めた最初の頃と今との中間地点で、いつも通り外に遊びに出ても楽しめなくなってしまった自分がいたんです。本来の自分がちゃんと出来てて、人と会って自分の話をすることは大事なんだけど、自分がちゃんとしてないと語り合うこともできないじゃないですか。それは苦痛でしかないですね。あとは自分自身に向き合えているかどうかは、作品にも大きく表れてくると思っています。
中村:今は、自身に興味をもって作品に向き合えているということでしょうか?
OHGUSHI:そうですね、自分と向き合い高めている時期です。それが作品のすべてに表れてくるんです。
中村:作品と向きあう際に大切にしていることはありますか?
OHGUSHI:そうだなぁ・・・。あえて言うなら3つあります。1つ目が自分と向き合い、自分のスタイルを追求するということ。2つ目が、自分の技法に確固たる自信を持つこと、3つ目が自分の技法をどこまで形として表現できるかということです。これは仕事においてもそうだし、人との関わりあいの中でもです。仕事ってどうしても色んなオーダー入りますよね。それって仕方のないことだけど、すべてをそのまま飲み込んでたらコンセプトを形にすることしかできないじゃないですか。クライアントは嬉しいだろうけど、広告としてのクオリティはまったくなくなってしまう。僕に発注したということは、僕のスタイル
が気に入ってくれたということだから、その天秤がクライアント側にいきすぎてつまらないことになってしまうのだけは避けたいですね。だから、自分の技法に確固たる自信をもってそれを貫き通す意志がないとダメだと思っています。僕のスタイルに期待されて発注されてるのに、そのクオリティに応えられないと相手に失礼だし。人との関わり合いの中でも、自分と向き合って充実してないと相手に心から自己開示出来ないですからね。だからこそ自分と向き合う事は大事にしています。
中村:自分の技法に確固たる自信をもつこと。OHGUSHIさんの揺らぎ無い描くことに対する姿勢が、それを可能にしているのだと強く感じました。本日はお忙しい中、お時間くださってどうもありがとうございました。
6
MY SOURCE
森本美由紀さん
いまだに現役で、自分のスタイルを貫き通している強さに惹かれます。
ドリームデザイン
IDEA SHOPの仕事を一緒にさせてもらいました。
巨大広告
イラストレーションメインの巨大広告を見て、自分のこうなりたいと思ったのがプロとしての活動の始まりであり目標であります。
佐賀県立有田工業高等学校デザイン科
ここに入学していなかったら違う職業だったと思います。
Roy Lichtenstein
人生で一番最初に好きになったアーティストです。
中村:森本さんとのエピソードで、もっとも印象的だったものを教えてください。 彼女のどういった表現・言葉に心動かされたのですか?
OHGUSHI:「大串君なら絶対成功するわよ」の一言ですね。あこがれの森本さんからの言葉なので、心底やる気になりました。他にも、ファッションの歴史を細かく教えてもらったりして、本当に勉強になりました。
中村:森本さんと大串君の作品は、似て非なるもののように感じますが、違いはどこにあるとお考えですか?
OHGUSHI:森本さんは60年代、70年代の女性を描く事が心から好きな方で、それにみんな共感とあこがれを覚えて好きになるんだと思います。僕もそうでしたし。でもだんだんとそういった感覚が僕には無くなってきて。もっと自分の墨と和紙から生まれる技法とか、エロティックさを追求することのほうが面白くなってきたので、そのあたりで違いが生じていると思います。
中村:ドリームデザインとは、どのようなお仕事だったのですか?
OHGUSHI:ポスターだけの仕事だったんですけれど、かなりコンセプチュアルなものでした。さっき、このプロジェクトのプロデューサーから電話をもらって。どうも昨日、N.YADC賞とったみたいです。この仕事を通じて「モノを企てる」ことの意味を教えてもらいました。
中村:OHGUSHIさんのものの考え方とは、どちらかというと逆ですね。取り組んでみていかがでしたか?面白かった?
OHGUSHI:新しいことに取り組むという点では刺激的で面白かったんですけれど、だからって僕自身がモノを企てる側にはならないだろうと思いました。モノを企てるためには策略を立てる知識が必要だし、人からお金を集めなければいけない。それらは、僕にとっては”絵を描きたい”という意識の妨げになってしまうので。僕は絵を描くプロだから、自分のポジションで精一杯仕事をすれば良いと思っています。僕は長い人生において楽しく、死ぬまで作家人生を送りたいのです。
中村:最近の巨大広告で、とくに興味をもたれたものはありますか
OHGUSHI:Lesportsacの広告ですね。3年前ぐらいから注目しています。イラストレーションと商品写真がうまく絡めてある。
中村:高校時代の話も聞かせてください。どのような高校生活だったんですか?
OHGUSHI:仲間と絵を描いたり、夢を語り合ったり、ライバルがいたり。仲間にも先生にも恵まれていました。今はコンペに興味は無いのですが、高校の頃は良くコンペに出してました。イラストレーション誌のチョイスとか毎回出しては落ちてましたね(笑)。
中村:こちらでは具体的に、何を学ばれていたのですか?作風は今と同じなのでしょうか?それともまったく違ったもの?
OHGUSHI:MACの基本的な使い方から製図器を使っての基本作業、グラフィックデザインの知識、基礎が主です。あとは個々で自由に絵を描いてました。作風は全く違いますね。アメリカンポップアートにどっぷり浸かってました。この時期、もっとも影響を受けたアーティストはリキテンシュタインです。
中村:どういったところに心魅かれたのでしょうか?
OHGUSHI:絶対的なインパクトがあるところです。当時は彼の真似事のような絵を描いて楽しんでいました。特に女性の金髪を描くのが好きで、ベタ塗りの黄色に黒い線を入れるのが快感でしたね。
7
FUTURE SOURCE
森田恭通 GLAMOROUS
以前、情熱大陸で観て、凄い人だ!と思っていたら仕事のオファーが来たのでビックリでした。
+81
表紙を飾った事をきっかけに自分の環境がどんどん変化しているのを肌に感じています。
高木紗恵子
光の表現、色彩、完璧です。今、世界で一番気になっているアーティストです。
自分
自分自身と向き合う事に、今はかなり興味があります。
中村:森田さんとは、どういったかたちでコラボレーションするんですか?
OHGUSHI:森田さんが大阪の北新地にキャバレーをOPENさせるんですけれど、そこの全フロアの壁面アート担当として指名を受けています。6月OPEN予定なので、もうすぐメディアにも広まって行くと思います。彼からは今後も目が離せないです。
中村:森田さんからのオファーは、何の仕事がきっかけだったのですか?
OHGUSHI:森田さんがCIBONEにいいアートはないかとの話をもちかけたみたいです。そうしたら、CIBONEさんは僕をプッシュしてくれて、森田さんもすぐに気に入って下さったみたいで、それで今回の絡みとなりました。
中村:空間デザインとアートのコラボレーション。この動きは今後、どのように変化していくとお考えですか?
OHGUSHI:今以上に個を追求する人同士のコラボレーションが主流になって行くと思います。個性のぶつかり合いが、どんどん良いものを生んでいくのではないでしょうか。
中村:+81といえば、感度が高く、今をときめくクリエイターがとくに注目している雑誌だと思いますが、同志に自身の作品を「見られる」ことは、やはり快感ですか?
OHGUSHI:どう見られてるのかな?と疑ったりもするので微妙ですよね(笑)。そこそこに嬉しいです。でも、基本自分の手から離れた仕事にはあまり執着しないみたいです。
中村:+81を通して、知り合ったクリエイターはいますか?いらっしゃったとしたら、その方のどういった部分に興味をもたれましたか?
OHGUSHI:残念ながら、+81をきっかけに知り合った方でまだ気になった人はいません。発売されて一週間弱ですからね。でも、同じ特集で紹介されていた高木紗恵子さんの作品は非常に興味があります。
