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BEPPU PROJECT、新たな地平へ。次なる「混浴温泉世界」へ向け「ベップ・アート・マンス2010」開催!


昨年(2009年)、世界屈指の温泉地、大分県別府市にて別府現代芸術フェスティバル2009「混浴温泉世界」が開催された。各所で展示されたアート作品を目指しながら、戦災に遭っていないレトロな町並みを巡り、ところどころで温泉と出会うこのユニークなアートフェスは、アートを使った地域への取り組みが注目されるこの時代にあって、新たな風を吹き込んだ。主催のアートNPO、BEPPU PROJECTは2005年からスタートし、現代アートの種を一粒ずつこの町に植え、アートへの市民の関心、スタッフ、そして場を育ててきた。「混浴温泉世界」は町全体を使ったアートの実験であるとともに、BEPPU PROJECTが5年をかけて温めてきた構想を披露するプレゼンテーションの場でもあった。

TOKYO SOURCEはBEPPU PROJECT代表の山出淳也さんのインタビュー掲載をはじめ、「混浴温泉世界」開催中はツアーを組んで別府を訪れ、同フェスの総合ディレクターを務めた芹沢高志さん、若手作家の滞在型制作拠点兼展示スペースである「わくわく混浴アパートメント」の呼びかけ人である未来美術家・遠藤一郎さんへの公開インタビューも行った。そして、意気投合した結果、フェスの模様を収録した書籍『混浴温泉世界 場所とアートの魔術性』の編集・出版を共同で行うなど、この2年間、別府と東京で連携を深めてきた。

2010年11月、BEPPU PROJECTは別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会の一員としてまたも新しい試みを行う。「混浴温泉世界」を振り返りつつ、次回、2012 年開催予定の「混浴温泉世界」に向かうために提言や意見を募るシンポジウムや、展示、パフォーマンスなどのアート活動を行っている地元の団体や個人に門戸を開いた、「ベップ・アート・マンス(BAM)2010」である。これは、実行委員会による助成金型のイベントではなく、基本、自由参加型の、別府という町におけるアート月間と言えるだろう。

BAMの期間中は、実行委員会が各団体に会場を無料で提供し、活動の宣伝も担当する。BAMはいわば、様々な団体・個人が参加する水平軸として機能し、さらに、次回の「混浴温泉世界」の開催につなぐという垂直軸が設定されている。

今回は、BEPPU PROJECT自体もBAMに参加する団体の1つであり、11月の第1週にはシンポジウムを開催する。「文化・芸術」を軸に、「地域資源」「商業振興」「コミュニティ」というテーマのもとに、5名の講師によるプレゼンテーションが行われ、「混浴温泉世界2012」のコンセプトを構築する、公開型の円卓会議が開かれる予定だ。

「ベップ・アート・マンス 2010」開催直前、この湯煙の町からまた新たなアートの地平へ踏み出しはじめたBEPPU PROJECT代表の山出淳也さんに話を聞いた。(TS副編集長・米田智彦)

【人物写真:安藤幸代】

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別府生まれのアートが集結!



米田:あらためて、「ベップ・アート・マンス(BAM)2010」のコンセプトから教えて下さい。

山出:昨年の別府現代芸術フェスティバル2009「混浴温泉世界」開催を契機に、今、たくさんのアートがこの町で生まれています。さらに、地域の日常に根ざすユニークな活動も、アートの観点から新鮮さを増し、注目されています。

そんな“別府生まれ”のアートをはじめ、展覧会やダンス、音楽、演劇など、公募によって44のアートプログラムが「ベップ・アート・マンス 2010」に集結しました。11月の別府は、町を歩けば様々なアートに出会えますよ。

米田:開催のきっかけは何だったのでしょうか?

山出:別府で生まれた小規模文化団体の活動を皆さんに伝えたいということはずっと考えていました。各団体はそれほど大きな集客力や予算を持っているわけではないけれど、今後、継続的に活躍していただきたいので、別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会として、事務局業務や広報協力を行うことで、各団体をサポートできれば、と考えたことがきっかけですね。

町の文化力をボトムアップして、「何かしたい!」と思っている人にとってのハードルを少し下げる。そのために、場所の貸し出しやプログラムの宣伝、事務局業務の一部を実行委員会事務局が担当し、各団体や個人を中間支援するという仕組みです。そこには1つの団体としてBEPPU PROJECTも参加しますが、他の団体や組織、個人もフラットな関係、状況に設定しています。

また、各団体はそれぞれの企画の範囲で集客をしているのが現状なので、そこをもっと横に串指ししたいと考えています。つまり、オンガクの客がダンスへ、アートの客がオンガクへというような、イベントや企画をまたがっていくような動きを創り出したいんです。

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公開参加型のシンポジウムで次回「混浴」へ


別府国際観光港の2階にあるBEPPU PROJECTの事務所にてスタッフとともに。

米田:次回、2012年に開催予定の「混浴温泉世界」と「ベップ・アート・マンス 2010」はどのような関係性になりますか?

山出:「ベップ・アート・マンス 2010」会期中に開催されるシンポジウムの後は公開参加型の討論会にするつもりです。次回の「混浴温泉世界」の大きな考え方が決まることになります。前回はBEPPU PROJECTが企画を行いましたが、もっと広く意見を募って、それを実際に次回の内容に反映させたい。シンポジウムに来場してもらって、会場で意見を述べてもらったり、USTREAMの中継でタイムラインで発言したりしていただいたものを拾い集めて、次への流れを作っていきたいですね。

「ベップ・アート・マンス」は緩やかで広いイメージの期間であり、場所です。ですので、次回の「混浴温泉世界」の開催について言えば、「ベップ・アート・マンス」の時期に「混浴」も開催する、というような形になれば、と考えています。

米田:今回のシンポジウムの講師の方々はどのようなポイントで声をかけられたのですか?

山出:前述のように、シンポジウムも、「ベップ・アート・マンス 2010」の登録プログラムの一部(主催:実行委員会、BEPPU PROJECT)です。

元ストリップ劇場の「永久劇場」をBEPPU PROJECTは借り、舞台芸術や映像などで利用している。別府ならではのユニークな“場”の再生だ。

次回の「混浴温泉世界」をどのような形で開催するか、何を目指すのか、そこをもう一度考えていくには、町、都市について、そして、別府という“場所”について、改めて見つめ直す必要があると思っているんですね。

「混浴温泉世界」は、複合型のアートフェスという点が大きな特徴ではありますが、それが僕らの本来の目的ではないんです。目的としては、我々BEPPU PROJECTが提唱する、社会的なメッセージを、アートフェスという形で発信したいということなんですね。

少し大きな話になってしまいますが、そのメッセージというのは、私たちが生きる現代という時代と、私たちが生活する町、都市について考えていくということなんです。

さらに言うと、それは別府のみの問題というより、別府を1つのモデルとして捉えていくことです。つまり、我々BEPPU PROJECTがなんらかのメッセージを発する場の1つとして、別府という町があるけれども、同時に別府以外の都市、町についても考え、メッセージを打ち出していくということです。

別府という町に関して言えば、文化を軸に、地域資源、商業、コミュニティという都市を形成する要素について考えていくことが必要だと考えています。シンポジウムでは、そういった都市、町、場所という観点から語っていただきたいという理由から、講師の方々を選びました。

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商店街の空き店舗などをリノベーションした"platform"と呼ばれる施設。別府市中心市街地の商店街内に、アートや福祉の施設をつくることで活性化を試みている。シンポジウムもplatformで開催される。

米田:ところで、様々なイベントや取り組みが行われる中で、特に山出さんが推す「ベップ・アート・マンス 2010」の見所や催しはありますか?

山出:やはり、シンポジウムでしょうか。シンポジウムは、会場に来る方が基本となり、プレゼン後の円卓会議に参加し、次回の「混浴温泉世界」を創造していくことになります。さらにUSTREAM中継も行いますので、来場できない全国の多くの方にも参加いただきたいと思っています。開かれた会議にしたいので、興味のある方は直接会場に来ていただくか、もしくはUSTREAMにアクセスして、タイムラインに是非参加して欲しいですね。

「ベップ・アート・マンス 2010」全体としては、それぞれ小さな企画の集合体で、これまでBEPPU PROJECT、もしくは、別府現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」実行委員会として扱わなかった企画が多いんです。「ベップ・アート・マンス 2010」は受け入れの間口が広いので、子どもからお年寄りまで多くの方が楽しめる企画になっています。

米田:ところで、「混浴温泉世界」を開催する前と後では、BEPPU PROJECTにどのような変化がありましたか? 以前を見えなかったものが具体的な目標として見え始めましたか?

山出:「混浴温泉世界」開催以前は、フェスを開催するための種蒔きを様々な事業で展開してきたのですが、現在はこの場にアートがしっかりと根付くために「混浴温泉世界」の開催も位置づけていくようになりました。ビジュアルでわかるように、現在の事業関係図をお見せしましょう。

『混浴温泉世界 場所とアートの魔術性』でも紹介したBEPPU PROJECTの構想がさらに進化。地域経済との連携、機関誌の発行など、より総合的、複合的に、アートと町を絡めて様々な試みを展開していくBEPPU PROJECT。

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雇用創出、県内希望就職先30位を目指す


米田:今回の「ベップ・アート・マンス 2010」を経て、次の「混浴」へ向かっていくわけですが、今、地域とアートは「混浴温泉世界」開催時よりも注目度が高まっていると思います。そのあたりどうですか?

山出:フェスの方向性として瀬戸内や新潟などとは違う、別府らしい仕組みや方向性をしっかり見せたいと考えています。BEPPU PROJECTとしては、アートやアーティストの社会的な地位の向上を図るために、マーケット依存だけではない仕組みの構築と、マネジメント人材の雇用創出を図ることを目指しています。来年度は5名以上の雇用を新たに創りたいと思ってます。

そして、社会の中にアートが必要不可欠なものとして、必然に繋がるような種まきを行っていく。まずは、中期目標として県内の新卒希望就職先の上位30社以内に入ることを目標にしています。

米田:ところで、TOKYO SOURCEも編集として関わらせていただいた書籍『混浴温泉世界 場所とアートの魔術性』を出版して半年が経ちました。地元の反応などはいかがでしょう?

山出:まだそれほどたくさんの反響があるわけではありませんが、「本を読んだよ」とか「フェスを継続してほしい」といった声をいただいていますね。私も毎週各地に呼ばれて講演をやらせてもらっているので、本を読んでいただいた反応があると言うことでしょう。

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遠慮せずやりたいようにやります!


パリやニューヨークでアーティストとして活動した後、故郷である大分に戻り、BEPPU PROJECTを立ち上げた山出さん。その眼差しは、別府から世界へアートを発信していくことを見据えている。

米田:では、次回の「混浴温泉世界」が前回と大きく違ってくる部分はどのあたりだと考えていますか?

山出:前回は全く初めての事業で、起ち上げの難しさを痛感しました。今回は、前回の組織や経験があるためスタート地点が異なっています。ただし、前回のイメージがついているので、これをどのように継続し、変化させるかが課題ですね。

米田:「混浴温泉世界」の総合ディレクターーである芹沢高志さんも継続してBEPPU PROJECTと次回の「混浴~」に携わっていくと聞きました。芹沢さんとはBAM、そして次回の「混浴~」についてどんな話をされていますか?

山出:BAMにおけるフラットな水平軸、そして、次回の「混浴温泉世界」を目指す垂直軸、その両方の在り方について話しています。でも、次回は、お互いやりたいようにやる! 山出も遠慮せずやりたいようにやります!(笑)。

米田:(笑)。では、最後に「ベップ・アート・マンス2010」開催直前ということで、メッセージをお願いします。

山出:市民主導型のアートフェスティバル「混浴温泉世界」の次回開催に向けて、動き出しました。常にスタートアップであると言うことを忘れずに、誰も見たことのない風景を創造したいと願うみんなと共に走っていきたいと考えています。ぜひ、混浴温泉世界シンポジウムにご参加下さい!!

米田:ありがとうございました。「混浴温泉世界」を訪れた時も予想外の出来事の連続でしたので、「ベップ・アート・マンス2010」でもどのようなことが起こるか非常に楽しみです。

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「ベップ・アート・マンス 2010」は11月1日(月)より11月30日(火)まで、別府市内の各所で様々なアートイベント、取り組みが開催される。TOKYO SOURCEからはフクヘン米田が、シンポジウムに帯同し、Twitterやブログ、USTREAMなどで随時レポートをアップしていきます。11月の別府にぜひ注目して下さい!!

◎開催概要
世界有数の温泉地として知られる大分県別府市。古くから観光地として栄えてきたこの町は、多くの人を惹きつける魅力をもった魔術的な港町です。

昨年開催した別府現代芸術フェスティバル2009「混浴温泉世界」では、国内外から訪れた170組のアーティストがその魅力にさまざまな角度から光をあて、町の日常に新たな発見をもたらしました。それを契機に、今、たくさんのアートがこの町で生まれています。

さらに、地域の日常に根ざすユニークな活動も、アートの観点から新鮮さを増し、注目されています。

そんな別府生まれのアートをはじめ、展覧会やダンス、音楽、演劇など、公募によって44のアートプログラムが「ベップ・アート・マンス 2010」に集結。11月の別府は、町を歩けばいろんなアートに出会えます。

◎ベップ・アート・マンス 2010
■期間=2010年11月1日(月)~ 11月30日(火)
■会場=別府市内各所

※スケジュール、各イベント詳細は、
「ベップ・アート・マンス2010」HPまで

http://www.mixedbathingworld.com/bam2010...