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Chim↑Pom (アート集団)


渋谷の路上で捕まえたドブネズミを剥製にした作品「スーパー☆ラット」、広島の原爆ドームの上の空に飛行機雲で描いて物議を醸した作品「広島の空をピカッとさせる」、カンボジアの地雷で爆破したヴィトンのバッグを売ったお金を寄付した作品「アイムボカン」など、社会的テーマを等身大の目線で扱った挑発的な作品を発表してきたアート集団、Chim↑Pom。彼らの発想の源を聞いた。

近藤ヒデノリ(TS編集長)

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MY SOURCE:Chim↑Pomの発想の源


TOKYO

グループ

面白い

リアリティー

ストーリー


 

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TOKYO


「SUPER RAT」2006 ビデオ、渋谷センター街で捕獲したネズミの剥製 courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

「ハマッ子なんですけど、学校が都内にあったので渋谷で育って、新宿、六本木で遊んでました(笑)」という紅一点のエリイ。元キャッチで「吉祥寺で一番黒い男」と言われていたという卯城さん、元走り屋だったという稲岡さん、「渋谷系が好きだった」という水野さんなど、Chim↑Pomのメンバーにとって東京という街が発想の源になっていると言う。
 「渋谷のようなストリートの価値観って美術に画期的に足りないもの。同時代にあるものだし、現代美術にもそういうものがあっていいはず。渋谷で作品をつくった時(「スーパーラット」「BLACK OF DEATH」)は圧倒的にそういうイメージがありましたね」

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グループ


「SPEECH」2007 ビデオ courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

「グループとして活動しているというのは大きいですね。日本の美術作家では昔、ハイレッドセンターなどいたけど、今、アート界でグループで活動している人ってあまりいない。6人でネタ出し会議やってると妥協ができないから、すごくいいアイデアでないとOKにならないし、話しあう中で誰かの出した案が練られて、どんどん洗練されていく」当然、ボツ案は山のようにあると言うが「今はできないけど、いつかできたらと思っていて、昨日もネタのリストを整理してたら、30個くらいは実際やったらスゲーなというのがあった。時々、ネタ尽きてんじゃねぇの?なんて言われるけど、ネタが尽きるとは思えない!」

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面白い


「なんでアーティストやっているかというと、世界中で一番面白いのが現代美術だから。とにかく面白いものが好きなんで」と言うエリイさんだが、彼らの面白さの基準とは?「やっぱり強度があるとか、消費されないもの。お笑いみたいにその場で面白いというより、100年後の人とか、100年前の人が見て面白いか考えます」とはリーダー。「どれだけカマシてるか」「ギャグセンス」「本質的かどうか、ぶれてないか」「その案が出た時にみんなのテンションがグッと上がる瞬間があるか」「やっぱり面白くないものはアートだと思えない。面白くなくても凄かったらいいけど。行き過ぎたというか、もっと!こんなもんじゃないだろ!という感じが大事なのかなと思いますね」

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リアリティー


「ばくはつ」2007 ビデオ courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

「面白いと感じるものの中に、リアリティーがあるかどうか。例えば、カラスの作品(BLACKOF DEATH)にしても、遊んで朝帰りしたりすると繁華街にカラスがもの凄くいっぱいいるとか、そういうリアリティーは大切にしてます。でも、東京を紹介するポストカードなんかにはそういうのは絶対ない。でも東京の空にはカラスがいるし、そこを誤摩化したりするのはやっぱり嫌いなんです」「リアルじゃないと、もう響かない。誤魔化しがきかない時代だよね。あたしたちにとっては超ラッキーだけど、今まで誤魔化してきた人には辛い時代になると思うなー(笑)」

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ストーリー


「ellieZABETH」2007 爆破したバッグ(photo: Kenji Morita)courtesy of Mujin-to Production, Tokyo

「ダイアナ妃やアンジエリイナ・ジョリーのようなセレブみたいに地雷撤去しにいきたい!」というエリイの夢から始まった作品「アイムボカン」。その話が出た一週間後にはチケットを予約、カンボジアに滞在しながらエリイ私物のバッグやi-podや自作のトルソーを地雷で爆破して作品化した。作品制作では、常にそうしたメンバー個人のストーリーを大事にしていると言うが、男子メンバーの夢は「華がない」「結局、カワイイ娘とヤリたいとかしかない(笑)」のでまったく使えないらしい。

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エリイ


エリイ

「エリイちゃんは僕らのソースになること、超多いです。例えば『フジヤマ・ゲイシャ・ジャパニーズ』をつくった時も、次の展覧会どうしようかって話してたら、いきなり電車の中でフジヤマゲイシャジャパニーズ!って(笑)。それ、どういう感じ?と聞いて…富士山とエリィちゃんが肩組んでいるイメージから始まった。今、日本のアーティストでも和ものは多いけど、驚くほど、外人から見た「和」というのはやってないですよね。会田(誠)さんもやらないし、天明屋尚さんも今の日本人から見た「和」だし。確かに今、ヒットだなって。エリイちゃんはこう見えて僕らの中で一番コンサバな考え方をもってるけど、そういうのが入った方が世の中を挑発するのによいこともある」

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逆をやる。でかい嘘をつく


「何かの逆をやろう」と考えていたところから生まれたという作品「オレオレ」(オレオレ詐偽とは逆に、無作為に電話をかけて息子を偽ってお金を振り込む)。「アイムボカン」でやったオークションも、ふつうのオークションの逆をやろうということで、値段が段々下がっていく形にしたと言う。一方、「エロキテル」という作品は(三行エロ広告を出稿し、そこへ電話してきた無数の欲望を電気に変換するという作品)、「でかい嘘をつこう」というところから始まっているとか。最初の最初、結成一週間くらいの時には「危ないだけのことやろう」というのをやったこともあると言うが、「それでは駄目だということがわかって(笑)、反省した。危ないだけじゃ面白くないなと」。

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interview by:

近藤ヒデノリ Hidenori Kondo
クリエイティブディレクター、CMプランナー
TOKYO SOURCE編集長、季刊誌「広告」編集委員

1971年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。東京写真専門学校中退。博報堂に入社後、休職してNY大学芸術学部/ICP修士課程で写真と現代アートを学び、9.11直前に帰国。同社に復職後は、TVCMやウェブなどの広告を制作しながら、個人としても個展・グループ展、展覧会キュレーション、書籍の編集など手法を選ばず表現活動を続けている。ラクダ似な旅好き。(photo: Suguru Takeuchi)
ブログ「TRAVEL HETEROPIA」http://d.hatena.ne.jp/camelkondo/
Twitter@KondoHidenori
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Chim↑Pom [チン↑ポム]
2005年、エリイ、卯城竜太、林靖高、水野俊紀、岡田将孝、稲岡求で結成したアート集団。2006年に開催された初個展「スーパー☆ラット」で注目を集める。「生と死」をテーマにした作品や、現代社会に全力で介入した作品を多く発表している。2007年にはセレブの地雷除去活動に憧れたエリイの目的を果たすためカンボジアに渡航し、高級バッグなどを地雷で爆破した「サンキューセレブプロジェクト アイムボカン」が広島市現代美術館「新・公募展2007」の大賞を受賞。2008年10月、広島市内上空にChim↑Pom が「ピカッ」の3文字を描いた騒動を検証した書籍「なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか」を2009年3月に刊行。また今年3月に初の作品集「Chim↑Pom」が刊行された(河出書房新社)。http://www.mujin-to.com/

インタビュー:TOKYO SOURCE(近藤ヒデノリ)
人物写真:武田陽介
場所:水戸芸術館
日時:5.5.2010

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