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中村政人 (アーティスト、東京藝術大学絵画科准教授、3331 Arts Chiyoda 統括ディレクター)


TSと季刊誌『広告』の連動企画の第4弾は、中村政人さんにTS初の動画インタビュー。

「美術と社会」「美術と教育」との関わりをテーマに、様々な地域でアートプロジェクトを手がけ、市民活動と恊働していくアートプラットフォームを開拓してきた中村氏。そんな彼が統括ディレクターとして旧練成中学校を改修し、アートセンター「3331 Arts Chiyoda」を千代田区・秋葉原の一角に今日、3月14日、プレオープンさせた。

このセンターは、「新しいアートの形をつくる」ための拠点として、アーティスト主導、民設民営、領域横断のスタイルを旨とし、東京と日本各地、また東京と東アジアのハブとなる「21世紀型オルタナティブアートスペース」と掲げている。

中村さんは、そもそも何故、アートセンターをつくろうと思ったのか? 
どんなアートセンターを目指しているのか? 
彼の思う「新しいアートの形」とはどんなものなのか? 
中村政人さんの発想の源とは?

『美術と教育/美術の教育/美術に教育』など芸術関係者へのインタビューワークでも知られる中村さん。同じく「会いたい人に会いに行く」ことの魅力にハマってしまった者としても、一度じっくりとお話を聞いてみたいと思っていた。

インタビューを行なったのは、オープンを控えた今年初頭。その後、憶えたてのファイナルカットで編集してPart1〜5(総尺42分強)に凝縮し、この原稿をウェブにアップしようとしている今、Ustreamでは「3331」でオープニングトークのライブ中継が配信され始めている。2010年代の春、何かが、ここから始まろうとしている。僕もこれから現場に向かいます!

近藤ヒデノリ(TOKYO SOURCE編集長)

開館記念展第 1 弾「見るまえに跳べ」(3331 ARTS CHIYODA ホームページより)

「3331」では今後、様々なアートプロジェクト・展示のほか、日本全国とつながる「Insideout/Tokyo」、レジデンスプログラム、アートスクーリングなどが行なわれる予定。

左上:「3331 Arts Chiyoda」外観(まだ工事中) 左下:錬成中学校体育館で行なわれた「かえっこ」(2008) 右上:金沢市民芸術村でM−02のバンジーフライト(2008)写真:米倉裕貴 右下:開館記念展 第2 弾 佐々木耕成展「全肯定/OK.PERFECT.YES.」

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Interview Part 1 「3331 Arts Chiyoda」の由来・きっかけ


・「3331 Arts Chiyoda」名前の由来は?

「江戸の一本締め」なんです。3と3と3を足すと九であり苦でもある。もう1回手を打つと点がついて苦を払い、丸くなると言われているんですね。その前の「いーよぉ!」というのが「祝う」という意味で、根本にあるのは苦しみを幸せに変える「感謝」なんです。

「江戸の一本締め」はいわば、古くからこの地に伝わってきた街の人が一瞬のうちに一体感をもつコミュニケーションの方法なんですね。このアートセンターのコンセプトが、その地域に根づいている文化を大切にすることなので、それを記号化して視覚化することで、そこに宿っている風習や精神が、新しい意味に置き換えられ、新たなメッセージとして組み立てられるんじゃないかと思っています。

・自分たちで、自分の場所をつくる

3331に対しての思いは、基本的には12年やっていたコマンドNの活動にあるんですよ。オルタナティブな精神は私たちの活動の軸です。自分たちが主導権をもちながら社会参加を組み立てることが出来る楽しさですよね。一般的な展覧会ではアーティストって、ギャラリストやコレクター、学芸員、スポンサーなど絶えず上位に来る人たちのために、どこか我慢しなくてはいけない部分があるじゃないですか。「小さいもの作って、売りやすいものを作って」とか言われるのが、どんどん苦痛になってね。仕事として割り切ればいいんですけど、そもそも、そういうところを壊そう、越えようというのが制作の動機なので合わなかったですね。

自分たちで自分の場所を創るというのは、たぶん僕だけじゃなくて、人間はどこかで本能的にそういう想いを持っていると思うんですよ。生きるということそのものが、自然に対して壁を創ることだったり、外敵から守ることだったりするわけで。

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Interview Part 2 押しつけるのではなく、始まるもの


・個と全体
・押しつけるのではなく、始まるもの
・ゲニウス・ロキ

—学校施設の跡地を使用するリノベーションというと最近では池尻のIIDや越後妻有でも例がありますけど、地域との交流を掲げるなど言葉上では共通する部分もあると思うんですが、違いというのはどこにあると思いますか?

他のところはそれほど知らないので比較はできないですけど、今までコマンドNで何百人という単位のアーティストと運営も含めて関わってきた経験値は僕のエネルギーですね。大学でも仕事として人の作品をいっぱい見るわけで。そういう中で、アートとか、表現すること、そういう人間の本質的な原点に立ち戻るようなことを一年中、人にも言っているし、自分でも考えているので、その辺の悩み方がたぶん、デザインやものづくりの領域とは違うと思います。

このアートセンターは「個と全体」というのが一つのテーマなんですが、一人のちょっとしたアイデアや表現する動機が、ある瞬間に全体に影響を与えるようなバランスが必要だと思うんです。そもそも、街の構造そのものが創造的な仕組をもっているんですよね。その中で人やお金、「ゲニウス・ロキ(地霊)」のような場自体の力が僕らにアフォードする要素として出てくるんだと思います。

僕自身、自分の個性というものをそんなに信じていなくて、場に喚起される力を信じているんです。ですから、このアートセンター自体が、人に喚起しうるオペレーションシステムを作って行かなくてはならないと思っています。押しつけるんではなくて、始まるもの。そういう意識がたぶんアートという言葉の中にも必要なんです。平たくいえば、街のような状態を創りたいんですよ。

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Interview Part 3 作品をつくるということ


・作品をつくるということ
・<閑話休題>中西夏之さんの作品に感じること

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Interview Part 4 社会化するアート


・アートプロジェクト:2つの形

—今回は日比野克彦さんの「明後日朝顔プロジェクト」や藤浩志さんの「かえっこプロジェクト」など、アートプロジェクトも数多く入っていますが、そうした中でのアーティストの役割について聞かせてください。

先日青森のスタッフから聞いた話しで、ねぶた祭りというのは、ねぶたを作る技師がいて、その人がアーティスト的存在としてその人にしか作れないねぶたを作り、それを市民が担ぐ。もう一つ、三社祭ではアーティストのような特権的立場の人はいなくて、完全に市民の手作りで祭り自体を作るんですね。ねぶたのようにアーティストに特権性がある形は、現場の市民が自分の想像力を発揮するチャンスはすごく少ないわけです。でも後者の方は、熱意をもって市民活動として参加していけば、自分の意見が全体を包む時もやってくるかもしれない。
どっちかというと僕は後者のプロジェクトを意識していて、一人の存在がある時に主導権をもてるようなチャンスに対してアートという意識が働くべきだと思うんですよね。両者ともアートの楽しさはあると思うんですけど、時代として圧倒的に欠けているのは後者の方ですよね。

・コミュニティーを創り、アイデンティティーを確認するアート

非西洋圏でアートが社会化する流れは始まったばかりだと思うんです。100年くらいの単位で考えていくと、アジアではこれから、西洋のように貴族階級が支えていくのではなく、市民が自分たちのコミュニティーを創っていくために、あるいは自分たちの社会的アイデンティティーを確認したり構築していくために、アートというものが増々必要になっていくと思う。
経済的に価値が高い低いという縦の構図が、変化してくるんじゃないかなと思っています。お金ではなく、共有するちょっとした意識。たとえば、80年生きてきたおじいさんが、自分の生きてきたプラスのポイントを一つでも他者とつなぐことをアートがやってくれたら、そこで自分の人生や生き方そのものが肯定されたり、存在が認められたりする。それは本人にとっては、すごく価値がありますよね。そういうアートの力をうながすのがアートプロジェクトのオペレーションであり、それをとりまく環境、意識、ばらまくのではないお金の使い方……そういうのがやっと始まってきたんだと思っています。

(初出:季刊誌『広告』2010年3月号)

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Interview Part 5 アートとは?


・アートプロジェクトとソーシャルプロジェクトの分岐点とは?
・アートとは逸脱を起こすもの
・アートとはふくらみをつくるもの
・アートの機能とは?

*参考:ポイ捨てはやめよう:Green Bird(TS015 ハセベケンインタビュー)

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interview by:

近藤ヒデノリ Hidenori Kondo
クリエイティブディレクター、CMプランナー
TOKYO SOURCE編集長、季刊誌「広告」編集委員

1971年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。東京写真専門学校中退。博報堂に入社後、休職してNY大学芸術学部/ICP修士課程で写真と現代アートを学び、9.11直前に帰国。同社に復職後は、TVCMやウェブなどの広告を制作しながら、個人としても個展・グループ展、展覧会キュレーション、書籍の編集など手法を選ばず表現活動を続けている。ラクダ似な旅好き。(photo: Suguru Takeuchi)
ブログ「TRAVEL HETEROPIA」http://d.hatena.ne.jp/camelkondo/
Twitter@KondoHidenori
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アーティスト、東京藝術大学絵画科准教授、3331 Arts Chiyoda 統括ディレクター。1963年生まれ。「美術と社会」「美術と教育」との関わりをテーマに様々なアートプロジェクトを進める社会派ア−ティスト。第49回ヴェネチア・ビエンナーレでは日本代表作家として参加、国際的にも注目を集める。1998年よりア−ティスト・イニシアティブ・コマンドNを主宰。2005年に活動拠点として「KANDADA」(神田)を立ち上げ、秋田県大館市で「ゼロダテ」、富山県氷見市での「ヒミング」など地域での市民参加型アートプロジェクトを数多く手がけ、市民活動と恊働していくアートプラットフォームの最先端を開拓するアクティビストでもある。

3331 Arts Chiyoda

日時:2010.1.13
場所:3331 Arts Chiyoda
インタビュー/撮影/編集:近藤ヒデノリ
人物写真:武田陽介

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