053

猪子寿之 (チームラボ株式会社代表取締役社長) 前半


猪子寿之が代表を務めるITベンチャー「チームラボ」は、「日本」や「未来」を発想の源とする。平面であるはずの大和絵を3DCGで表現した「花と屍」や「花紅」といったビデオアート、検索結果が“面白い順”に表示される「サグール」といったWebサイト、ユーザーインターフェイスをエンタテインメントに変えた「act face」、さらにオフィスの机やイスといったプロダクトまで……デザインとアートとテクノロジーの境界を曖昧にする作品を発表し続けている。猪子は高校生の頃からインターネットによってもたらされる情報化社会の到来を予期し、東大在学中の2000年にチームラボを設立。現在、メンバーは100名を超える。

そんなチームラボを訪ねたのは2009年春のこと。東京・本郷の見晴らしのよい高台に本社が入るビルがあった。受付にはファミンが置いてあり、スーパーマリオ風のゲームを操作して、メンバーを呼び出すシステムになっている。


その隣にメンバー1人1人が自分をビジュアル表現したCDジャケットがずらりと並ぶ。フロアも赤や黄色といったカラフルなデザインで統一されており、一歩踏み入れただけでこの会社のクリエイティブな雰囲気がびんびん伝わってくる。打ち合わせ室でしばらく待っていると、長身にソバージュヘア、ラフないでたちの猪子が現れた。端正だけど無骨なヒゲ面でまるで『バガボンド』に出てくる野武士のよう。

実はこのインタビュー、3回に分けて行われた。こちらの予想もしない発想で質問を切り返し、「これ、絶対書かないでよ。ほんっとに書かないでね!」と、サービス精神旺盛に語ってくれるものの、いったん考え始めると長い間沈黙。本筋に戻ってきては、また脱線していくという、猪子独特のペースについ乗せられると話はいつまで経っても終わらない(苦笑)。でも、顔をくしゃくしゃにして大笑いする彼を見ていると「この会社はきっと楽しいんだろうな」とつい想像してしまう。

業界を超えて注目を集めるチームラボだが、猪子は上場といったベタなサクセスストーリーには全く興味がないと言う。社名には、自分の卑小なエゴよりも「仲間とチームを組んでヤバイものを作っていたい」という彼の思いが込められている。「日本発、ウルトラテクノロジスト集団」を標榜する高度な技術力と発想力の両輪で、「日本人の持つ主観」や「プラットフォーム型」といったコンセプトを作品へと昇華させている。

「ちょっと一瞬、タバコ吸ってきていいすか?」
話の肝になると必ず、そう言って席を立つ彼を追いかけ、喫煙所でもICレコーダーを回し続けた。TS史上最長3日間計9時間強の取材。「日本」と「未来」と「オモロイ」が詰まったトリックスター・猪子寿之インタビュー、とくとご覧あれ。

米田智彦(TS副編集長)

1

アイデンティティにも個性にも興味がない


マンガ

ドラゴンボールはやっぱりすごい。

ファミコン

あの頃のゲームクリエイター達はチャレンジしていた。

インターネット

インターネットで人生が変わった。

チームラボ

僕にとって一番楽しいのは、一番好きな人と仕事をすること


米田:まずはマイソースから聞かせて下さい。猪子さんは、マンガに大きな影響を受けたそうですね。やっぱり小さい頃からよく読んでいたんですか?

猪子:そうっすね。ありとあらゆるマンガですね。

米田:その中でも『ドラゴンボール』をよく挙げてますね。

猪子:いや~それが、実は『ドラゴンボール』ってそんなに好きじゃないんですよ(笑)。

米田:えっ!? そうなの?

猪子:いや、みんな、カッコつけて「好き」とはなかなか言わないじゃないですか。でも、やっぱりスゴイじゃないすか。

米田:確かに…。じゃあ、『ドラゴンボール』以外だと?

猪子:『寄生獣』とかは読んでましたね。今でも『(週刊少年)ジャンプ』は読んでますけどね。『TO LOVEる』とかね。

米田:マンガ以外の小説とか他の本は?

猪子:一瞬かじったけど、「面白くないなあ」って。本なんて読むのが信じられなかった(笑)。でも、学研とか、歴史マンガは読んでたね。織田信長の伝記とか。僕、歴史オタクなんですけどね。

米田:じゃあ、子供の頃は、やっぱり戦国武将みたいなヒーローに憧れたり?

猪子:いやそうじゃない。誰かに憧れとか全然ない! 芸能人とかああいうふうになりたいとか思ったこともないから(断言)。

米田:「自分は自分」っていう感じ?

猪子:いや、そんなのも全然興味ない! アイデンティティとか個性とかに興味がない。

米田:おお~面白い意見ですねえ。じゃあ、マンガとは違って、テレビは全く観なかったそうだけど?

猪子:いや、『(オレたち)ひょうきん族』も物心付いた頃から観てたし、小学校まではテレビを観てたよ。でも、テレビをやめようと明確に思ったのは、大学で上京した時。きっかけはインターネットですね。時代としてはネットがちょうど出始めの頃だった。
自分はマンガばっかり読んで、テレビとか映画とか本とかに触れてないのは、すごいラッキーだなと思ってる。つまり、西洋的な思想の影響がすごい少ないのは良かったなと。

米田:すごくユニークな考え方だなあ。じゃあハリウッドの影響とかもない?

猪子:そうそう。やっぱり、本とかってインテリが作った文化で、西洋思想の影響が強いから…。ハリウッド映画が以前に比べると世界的にヒットしなくなっているでしょ? あれってインターネットの影響が大きいと思っている。特に9.11以降にね。世界がアメリカ以外にもいろいろあるんだってことがネットによって分かったから。アメリカの映画っていつもアメリカが世界を救うでしょ。

米田:『アルマゲドン』みたいにね(笑)。じゃあ、西洋思想に侵されていない日本独自のものとして漫画に興味があったのかもね。他にマイソースを挙げるとしたら、やっぱりファミコン?

猪子:ファミコンが大好きでしたねえ。でも、RPGはできなかったんだよね。

米田:え!? できないってことはないでしょ(笑)。いつもあれだけ『ドラクエ』のすごさを語っているのに?

猪子:『ドラクエⅢ』の小さい島から出れなかったんですよ。

米田:ああ、あったあった! そんなの(笑)。

猪子:そこから先に行き着けなかった。頑張って経験値貯めて…とか自分は無理だったから(笑)。RPGって僕、本当に全くできないんですよ。でもね、ぶっちゃけ言うと、マンガと同じで、ゲームに関しても、ゲームをするっていう行為じゃなくて、その“文化”が好きだったのかもしれない。

昔の日本のゲームが持っている独特の文化、あの頃の、わけわかんない人たちがわけわかんないもの作っていって、新しいことをやろうとして、でもやろうとしすぎて、ほとんどが“クソゲー”だったみたいな状況が面白かった(笑)。

米田:『たけしの挑戦状』みたいな、くだらなすぎて再評価されてるソフトもあるしね(笑)。

猪子:そうそう。あの当時は、ゲームクリエイターとかが「ネクストに行こう」としてチャレンジしてた時代だったと思う。だから、「クソゲー」って愛情表現なんスよ。当時は出てるゲームの99%がクソゲーなんだけど、その次に行こうとする行為に対しては、愛と敬意だよね。だから、「クソゲー」って、僕にとっては、すごいポジティブワードなんです。

2

情報化社会で自分の人生は変った


米田:マンガとファミコンのほかに、マイソースを挙げるとすると、やっぱりインターネット?

猪子:そうですね、インターネットは絶対だよね。情報化社会で自分の人生は変わったから。

米田:猪子さんは中学生の頃に頭に“電波”を受けたんだよね。その後、高校生になって、NHKの『新・電子立国』っていう番組を観て衝撃を受けたそうだけど。

猪子:メディアっていうのはいつも権力の体制下にあるんだけど、それはヒトラーの時代だってそうだったわけ。それに、グーデンベルグの時代から印刷ってのは体制側に管理されてたわけだよね。でも、人類史上初めて、個人が自由に世界に向けて情報発信できる時代が来るなんて、「奇跡だな」って、その番組を観て思ったんですよ。
しかも、情報配信コストが、理論上ゼロになるなんて、「すげえな」って。これは「全部変わるな」と思った。僕は人が歴史を作っているわけじゃなくて、“状況”が歴史を作っていると思うから、これからその状況が変わることにワクワクしたね。

米田:確かにそういう考えもあるよね。イデオロギーが先じゃなくて、経済とか食糧事情とかで、世界の革命は起きて、その後、思想が生まれたっていう…。でも、高校生にしてすごい戦略ですね(笑)。

猪子:でも、民間の企業が勝手にやって、世の中が変わることだってあるんですよ。だって、Googleで世界は変わったでしょ? 僕は高校生の頃、その方法に気づいて、政治家や官僚になるんじゃなくて民間に入ろうかと思った。でも、当時の日本の時価総額のトップ30を見たら、元国営の企業や公共事業をたくさん受けているところか、テレビみたいな免許性の規制産業か、元財閥系の企業しかなかった。本当の民間ってトヨタくらいしかなかったけど、当時はまだトヨタは5位にも入ってなかったからね。
それに、入社して頑張っても、意思決定できるのって60代になってからですよね。でもね、60なんて本当の意味での最先端なことなんて無理じゃないですか。60まで我慢してもしょうがないなって。

で、ある企業を調べたら、3代続けて社長が先代の婿養子で、しかも東大卒の官僚なんですよ。「あ、なるほど!」と高校くらいの時にに気づいた。そこで、考え付いたのが、東大に入って、財閥系の逆玉に乗ること(笑)。

米田:高度な戦略ではあるけど、いかにも高校生が考えつきそうなことだなぁ(笑)。

猪子:でも、それにしても、江戸中期くらいの徳川幕府に婿入りするんだったらいいけど、今みたいに江戸末期みたいに傾いている時期に婿入りしたら最悪じゃん(笑)。
そこまで考えて、計画は全部捨てて、今までの社会とは全く関係ないようなクリエイティブなベンチャーを作ろうと思った。

米田:それが起業しようと思った理由なんですね。いつ頃?

猪子:大学受験の前後ですね。だから、東大も入んなくて良かったんですよ。まあ、今は入って良かったと思ってますけどね。ホントは大学時代に起業した方が良かったんだけど、大学院に入ってから会社を作りましたね。

米田:起業した時はどんな会社を作ろうと思ってたんですか?

猪子:日本ってテクノロジーと文化しかなくて、情報化社会に変わった時に、テクノロジーの種類が全部変わるから、今までの技術は全く使えなくなるだろうと。文化に関しても、ゲームとか日本独自のすごい文化が出ていたけど、当時は微妙にリスペクトされてなかったから、それを応援しようって思ったんですよね。
だから、自分は起業して日本の文化とテクノロジーにコミットしようってね。でも、社会に1番必要なことにコミットしたかっただけで、夢とかそんなもので決めたわけじゃない。論理的に決めて、社会に貢献しようと思ったっていう。別に仕事って夢じゃないから(キッパリ)。

米田:なるほど。それが「電波」の中身だったですね。「日本を再生せよ!」っていうメッセージを交信しちゃったらしいですね。本人以外、たぶん誰も分かんないと思うんだけど(笑)、ある種の直感、ひらめきがあったというか。

猪子:そうですね、僕らは日本という豊かな国にで生まれてラッキーだなあって思ってたんけど、バブルが弾けてその豊かさがなくなりそうな雰囲気があって、自分が大人になったときに、自分だけじゃなくて社会全体が豊かじゃないと嫌だな、みたいなことを思ったのかな。結果的に貢献できるかは別にして、社会を豊かにするということに昔からコミットしようって思ったんですよね。

3

未来の社会のヒントになるようなものを作る


米田:それと、「チームラボ」っていう会社もマイソースに入るのでは?

猪子:そうかもね。チームラボがないと僕は何もできないから。

米田:チームラボをやってなかったら何をやったと思います?

猪子:分かんないけど、時代が違ってたらゲームクリエイターとかCMクリエイターとかかな…。もっと昔だったら左官になって、壁造ってるかもしんないし(笑)。

米田:似合いそう(笑)。ところでメンバーはどうやって集めたの?

猪子:どうせやるなら、人生楽しい方がいいから、「ビジネスはとにかく楽しもう」と。僕にとって一番楽しいのは、一番好きな人と仕事やることだと思ってたから、中高の1番の親友と、大学の同じ学科の親友と、地元で阿波踊りを一緒に躍ってた学科以外の一番仲いいやつと一緒に会社を立ち上げたんです。

米田:どうやって口説いたんですか?

猪子:友達は勉強ばっかりやってたから、感情を解放してやろうと(笑)。

米田:あはは。新興宗教みたいだな(笑)。

猪子:教育って西洋思想だから、感情を押さえ込める人間がいいとされているでしょ。だから、「旨いもん食い行こうよ」とか、「合コンって楽しいから行こうよ」って、誘って。そしたら春休みになって僕と離れたとたん、つまんなくなっちゃったらしくて(笑)。それで「また遊ぼうよ!」って声かけた時に、「でもね、合コンよりも面白いのがあるらしいよ・・・どうもね、聞いたところによると、“ベンチャー”っていうのが楽しいらしいよ」って。

米田:(爆)!

猪子:そいつは俺と遊ぶのが楽しすぎたから、「もっと楽しいことがあるのか!?」って思ったらしくて(笑)。

米田:でも、猪子さんって、いわゆるリーダーって感じじゃないでしょう。

猪子:全然。根がピースなのが好きなんですよね。遊びを流行らせたりね。クラスの中心じゃなくて、2番目くらいで、ちょっと裏方なんだけど、みんなと遊ぶのが好きみたいな。まあ“インスタレーション”みたいな(ちょっと引いて見ている)感じ(笑)。

米田:だははは。良く言えばね。

猪子:僕は、世代的にも友達の価値観が高いと思うしね。「友情・努力・勝利」って『週刊少年ジャンプ』のマンガのストーリーの法則なんだけど、段々、努力と勝利が下がって、友情が高くなった世代というか。誰も支配したくないし、支配されたくないしっていう。

米田:でも、支配したくなりがちなのが人間じゃないですか?

猪子:階層があると、新しいものが生まれるような状況になりにくい。さっきのファミコンみたいな、わけのわかんないものを作るような、権威とか全く関係ないような価値観が大事だと思うから。階層があって人間関係が固定されていると、自分が間違えまくりたくても、間違えられなくなる。でも、あえて「お前、違うよ」って言われたいじゃない(笑)。
自分のクリエイティビティも上げたいし、他人のクリエイティビティも上げたいし、みんなが能力を発揮できるような環境に自分もいたいし、周りもいてほしいしっていう。

米田:じゃあ、チームラボの仕事としては、最初はどういうことを想定していたんですか?

猪子:これから社会が多様化して、情報が爆発するから、大量の情報をどう扱うか、みたいなテクノロジーを作ろうかなみたいなことを考えたね。今で言う“レコメンデーションエンジン”みたいなものを作ろうって。単なるランキングじゃなくて、その人の趣味嗜好にあったものを、1人1人の価値が一様じゃない時代に、どうしたら情報選択のソフトが作れるかっていう。だから、サーバー側の大量の情報を扱う裏側のシステム、それを初めからやっていた。

それから他には、BEAMSギャラリーで、「マンガアート展(2000年8月)」っていうのをやって、マンガとファミコンで表現したり、近藤等則さんとDJでやった光と映像と音楽の祭典で、僕らはネットの生中継を担当して、コメントを書き込めるようにして、会場でリアルタイムで見れるようにした。

米田:今の「ニコニコ動画」とか「U-STREAM」みたいですね。

猪子:あとは、JAVAでVJみたいなものをやったりして、アヴェマリアの歌詞を映し出したり。

米田:当時からそういうメディアアート的なものと、サーバ構築とかプログラミングとか、Webソリューション的なものの両方をやりたかったんですか?

猪子:まあ、どっちにしろエンジニアが作るからね。

米田:でもアートとかデザインとかにも興味があったの?

猪子:ぶっちゃけ言うと、デザインってびっくりするくらい興味がない。アートも全く興味ない!(笑)。

米田:だと思った!!!!(爆)。

猪子:でも、本質的には超興味があって…例えば、「ドラクエ」の「スライム」ってどろっと垂れてる気持ちの悪いヤツに目と口をつけたら、子供はそのぬいぐるみをみんな買っちゃうわけじゃない? だって本来はホラー映画しか出ないようなものでしょ。あれってすごいデザインセンスですよ。あとは、うんこをピンクにしたりとか。

米田:『Dr.スランプ』ね。

猪子:そう。みんなが嫌いなものを超キュートなものにしたデザインっていうのには興味があるというか。

米田:いわゆるデザインのためのデザインじゃないというか。

猪子:広い意味でのデザインですね。アートはまた違う。アートというのは、ジャンルが必ずあって、その中で評価軸ができるじゃないですか。それがないけど、力があって、未来のヒントになるようなものとか、アートじゃないけど、人々の何かを解決するようなものとか、そういうものをアートとして評価すべきだと僕は思っていた。

だから、どのジャンルに置いていいかわかんないものはアートとしようと。そしたら評価してくれるんじゃないかって。実際は、あんまり評価してくれないんだけど(苦笑)。

米田:今のアート文脈とは違うかもしれないけど、未来や誰かのためになっている何か。

猪子:そういうものを自分はいっぱい作りたくて。未来がワクワクするものになるような、未来の社会のヒントになるようなもの。無理やりでもビジネスのシーンに当てはめられたらいいけど、そうじゃないものがアートとして評価されるべきだと思っている。

米田:でも、自分のやりたいことではあってもビジネスにならない時もありますよね。

猪子:そう、何かクリエイトするという行為は、経済的には成り立たないことがあるけど、それだと継続性がないから、整合性をつけるというのは重要ですね。結果として企業のブランディングになったりね。
でも、そこは曖昧になっていくとは思うんですよね。だから、僕のアートへの興味には勘違いがあったっていうことかな(笑)。社会の問題を解決したり、未来へのヒントになるようなものがアートだっていうふうに思ってたのかもしれない。

4

シームレスで境界線が曖昧なスペシャリティの集合体


米田:ところで、自分は技術者だと思いますか? それともクリエイター?

猪子:全然思わない。なんだろ…大工の棟梁?(笑)。

米田:ふふふ。じゃあ、ある時から経営者としての意識は芽生えた?

猪子:芽生えない!(笑)。経営者とかいなくても会社が回っていけばいいから。経済的に成り立つってことは重要視しているんだけど、経営者とかってよく分かんない。だって、ヤバイもの作ったら、みんな仕事を頼みに来てくれるでしょ?

米田:ああ、そっちなんですね。

猪子:みんなでヤバイもの作れたらいいよね。それもデカければデカいほどいいですよね。

米田:儲けることに関しては?

猪子:全く興味ない。でも、ビジネスはもちろん重要っスよ。チームを維持するってのはすごいお金が要るし。
僕は自分の会社を専門家の集団にしたいんですよ。情報化社会の中でソリューションしたり、ものを作ったりする、ヤバイものを作るには、いろんなスペシャリティの集合体である必要があると思っている。チームラボのスタッフって、すごいシームレスで境界線が曖昧なんですね。インフラの専門家もCGの専門家も社内にいるし、空間の専門家もいるし、データベースの専門家もいる。
今ってデザインとテクノロジーの境界がすごい曖昧になってきているから、やるのは“社内”がいいんですよ。なぜかというと、デザインとテクノロジーの境界を曖昧に進めていきたいくて、常に切り分けたりしたくないから。自分じゃ想像できないものをいっぱい生み出したいし、作りながらそれを考えていたいから。

米田:普通は分業のスペシャリストを敢えて曖昧な役割で使うと。

猪子:常に同じ場所にいて、メンバーとコミュニケーションをとってディスカッションしながら、みんなで作ってみんなで触って、っていう作り方をしている。思想も価値も共有するし。だから、天才には興味がなくて、専門性に興味がある。

米田:なるほど、それが個性には興味ないってことなのか。

猪子:もちろん、ジェネラリストもメンバーにはいます。コーディネートしないといけないし、コミュニケーションしないといけないから必ず必要にはなる。だから、スペシャリストとジェネラリストが混合してますね。
ヤバイものを作るために、経済的に成り立つことはすごい重要で、作ることと経営は切っても切り離せないんです。さらにメンバーが価値を共有して、一緒に働いた方がいい。
作るための集団だから、チームラボには、いわゆる経営者はいません。

米田:ちなみに営業は?

猪子:いないですね。基本的には15%くらいがジェネラリスト。他はスペシャリストですね。営業がいなくてもヤバイものを作れば勝手に仕事が来ると思う。情報流通コストが下がっているからね。そうじゃない時代だと営業の人が必要かもしれないけど。

米田:では、日本人が世界に出ていくためにはどうことが必要だと思いますか? 例えば、以前猪子さんは「英語なんてしゃべれなくてもスペシャリティがあればいい」って言ってましたよね。

猪子:もちろん人生を楽しむためには英語を話せた方がいいけど、オリジナルなものを作って活躍するためには要らないってことですよ。超ヤバイもの作れば、勝手に向こうが翻訳つけてくるわけだから。「マリオ」を作った人たちや鳥山明先生が英語しゃべれたとは思わないし(笑)。
だから、営業を雇わないっていう発想と似てるかもね。いいものを作ればいいって信じているというか。まあ、そうじゃないかもしれないけど、信じたいじゃん!

米田:(笑)。

猪子:未来はこうあるべき、情報化社会はこうなるっていうのがはっきり見えるから、先に自分たちはこうあろうってことですね。テレビを捨てたのも、インターネットが出てきたんだから捨てようってね。

米田:そう自分で決めて突き進んできたってことです。主体性を持ってね。

猪子:うん。でも、突き進むエネルギーは極めて低いんだけどね。すぐサボるとかさ、意思が弱いとか(苦笑)。人間としてポテンシャルが低いんじゃないかなあ。

米田:ハハハ(笑)。

猪子:したいけどできない。ヤバイものを作るために社会の中でポジションを上げていきたいですよ。

米田:で、ここまでお話を聞かせていただきましたが、作品と仕事の内容を全然聞けてないので(苦笑)、聞いてもいいですか?

猪子:えっと…あの…僕、どこでもうかがいますので、次回話してもいいですか?

米田:ククク(笑)、だって隣のテーブルでとっくに会議始まってますもんね(爆)。次、絶対頼みますよ!

猪子:だ、大丈夫ですって!(笑)。どこでも行きますから!!

チームラボ株式会社代表取締役社長。1977年、徳島市出身。01年、東京大学工学部計数工学科卒業。同時にチームラボ創業。04年、東京大学大学院情報学環中退。大学では確率・統計モデル、大学院では自然言語処理とアートを研究。ニュースポータルiza(イザ!)(Web of the year 2006 新人賞、Web人 of the year 2006)、オモロ検索エンジン「sagool」、不動産物件検索ポータル「いえーい!」、オモロイ画像を優先的に表示する「SAGOOLTV」などのWebの企画開発や、検索エンジンやレコメンデーションエンジンなどの開発販売を行う他、アート活動として、水墨空間「花紅(ハナハクレナイ)」などで、海外などの展覧会に多数参加。また「au Design project」にて、2007年のコンセプトモデルとして、新しいインターフェイスの概念の携帯電話「actface」を発表し、「第11回文化庁メディア芸術祭審査員推薦作品」に選ばれ、08年Web広告研究会主催の「第6回Webクリエーション・アウォード」で最終審査の10人に選ばれる。

取材日時:09.4.11、6.1、7.6
東京・本郷 チームラボ本社

インタビュー:米田智彦(TS副編集長)
人物写真:高木"NOJYO"俊幸
協力:チームラボ

リンク:チームラボ株式会社

バックナンバー